絵は、子どもからのメッセージ

臼井幼稚園の描画活動は、見本のように描くことや、上手な作品を完成させることを目的としていません。

子どもたちが色や形、さまざまな材料用具と出会い、試したり、混ざって思いがけない発見になったり、、迷ったり。自分の中にあるものを表していく活動です。

色・形・材料用具の経験を積み重ねる

描画活動では、「経験したことを描く」「想像したものを描く」といった題材の分類はしません。

子どもたちがこれまでに、どのような色、形、材料用具を経験してきたかを大切にしています。

たとえば、描いた線や顔の上から絵の具を塗ってしまったとしても、単に「塗りつぶした」とは考えません。

子どもは、消したいのではなく、もっと塗りたいのかもしれません。色が重なったらどうなるのか、確かめているのかもしれません。

大人が途中で止めるのではなく、その表現の中で子どもが何を試しているのかを考え、次の材料や色との出会いにつなげていきます。

テーマは、表現するためのきっかけ

描画のテーマは、作品を完成させるための目的ではありません。

「春だからいちご」「遠足に行ったから遠足の絵」と決めるのではなく、子どもたちがどの材料なら伸びやかに表現できるかを考えて選びます。

テーマは、子どもたちの表現を引き出すための、いわば「借り物」です。

前年にうまくいった活動を、そのまま繰り返すこともしません。子どもたちも、クラスの関係も、その年によって異なるからです。

導入は短く、表現を誘導しない

活動の前に、大人が長く説明したり、手本を見せたりすると、子どもたちの考えは大人の意図へと引っ張られてしまいます。

臼井幼稚園では、子どもが活動を始められる程度の、短い投げかけを大切にしています。

子どもが描き始める前に心に思い浮かべるものを、私たちは「想」と捉えています。
(師匠の小谷先生から教えていただいたことです)

「想」が狭すぎれば、似た絵が並びます。反対に広すぎれば、何を描けばよいか分からず、描き始められない子もいます。

教員は答えを示すのではなく、一人ひとりが自分の絵を思い浮かべられるよう、テーマや材料、言葉の選び方を考えます。

段取りで描かせない

「最初にこれを描き、次にこれを塗り、最後にこれを加える」という手順に沿わせれば、整った作品はできるかもしれません。

しかし、それは子ども自身の表現ではなく、大人が考えた完成図を再現する作業になってしまいます。

材料用具の扱い方や安全に関わること、活動の見通しを持つために必要なことは伝えますが、何をどこに描くか、どこまで描くかは子どもが決めます。

子どもの中で表現が終わっているのに、大人の考えで何かを描き足させることもしません。

絵を評価するのではなく、受け取る

絵は、子どもからのメッセージです。

大切なのは、「上手に描けたか」「何に見えるか」ではなく、その子が何を感じ、何を試し、何を伝えようとしたかを受け取ることです。

完成した作品だけではなく、色を選ぶこと、描き直すこと、塗り重ねること、手を止めて考えることも、すべて描画活動の一部です。
正解も、お手本も、上手・下手もありません。

子どもが自分で考え、自分で選び、自分の方法で表すことのできる描画活動を、臼井幼稚園は大切にしています。

 

描画展示と描画鑑賞ツアー

毎年12月には、園児一人につき一枚の絵を選び、描画展示を行なっています。

たくさんの作品を飾るのではなく、一枚の絵とゆっくり向き合い、その子がどのように色や材料用具と関わり、何を表そうとしたのかを観ていただくための展示です。

展示期間中には、園長による「描画鑑賞ツアー」も行ないます。

鑑賞ツアーでは、絵の上手・下手や出来栄えを解説するのではありません。どの時期に、どのようなテーマで描いたのか、どのような材料や用具を使ったのか、その活動までにどのような経験を重ねてきたのかをお話しします。

また、保護者の方にも、絵を見て感じたことをお話しいただいたり、疑問に思ったことをご質問いただいたりしながら、一緒に子どもの表現を読み取っていきます。

会場には、実際に使用している四つ切画用紙や色画用紙、共同で使う絵の具、個人絵の具、クレパス、墨汁、筆、筆洗バケツなども用意します。

なぜ幼児の描画に四つ切画用紙を使うのか。紙の大きさや色、絵の具の種類、筆や用具の違いが、子どもの動きや表現にどのようにつながるのか。完成した一枚だけでは分かりにくい、材料用具の意味についても具体的にお伝えしています。

描画展示は、作品を発表するためだけのものではありません。

子どもから届いたメッセージを、園とご家庭が一緒に受け取る時間であり、臼井幼稚園の描画活動に対する考え方を知っていただく機会でもあります。